Design 高橋実
2021年京都大学ギャングスターズイヤーブックが校了しました。制作させていただいて今年で5年目になるのかと思います。
アメリカンフットボール(以下フットボール)という競技を知っている人は多いと思いますが、実際どういう競技なのかを理解している人は意外に少ないかもしれない。アメリカではメジャーリーグよりも、NFL、フットボールプロリーグが絶対的な人気を誇っている。高校や大学においてフットボールの選手になるのはアメリカでは花形といっていい。
過去も現在も大学体育会のフットボールは関西学院大学が圧倒的な実力を誇っている。続くのは立命館、関大、関東では日大、法政などだろうか。どこもスポーツ推薦で選手を引っ張ってくることが可能な私大であり、特に関学においては大学配下の高等部からも実力ある選手たちが集まってくるフットボールの超名門校といっていい。一方の京大は国立であり体育会には推薦などはなく、東大と並んで日本最難関校のひとつして、まず何より厳しい受験を勝ち抜かなければならない。京大はそのような条件でありながら、かつて絶対王者関学の145連勝を止め、大学の頂点の甲子園ボウルを6度制し、また社会人と真の日本一を争うライスボウルも2年連続4度制している。京大が全盛を誇った80年代、甲子園のスタンドは満員だった。京大の快進撃は当時の人々にフットボール人気のきっかけをつくった。雑ないい方になるが、大学で初めてフットボールを始めた選手たちが、フットボールに特化したエリート集団を打ち破るという図式だ。近年は日本一に遠ざかっているものの、受け継がれた歴史と伝統によって関西1部リーグの強豪校として存在している。2016年、大学体育会初の法人化になったのは、日本一奪還の強い意思のように思います。
イヤーブック制作で関わらせていただく自分から感じることは、彼らの取り組み方は単に大学の体育会というレベルではない。選手、スタッフなど含めて総勢200名を超えることもある組織。ごくありきたりな楽しいキャンパスライフはなく、関学を倒して日本一になるという絶対的な目的のため、大学の授業も受けた上で他の時間は全てフットボールのために費やす。朝は筋トレでクラブハウスに集まり、夕方からグラウンドで練習。終わって再びクラブハウスで筋トレ、食事、夜遅くまでミーティングになる。(現在はコロナの影響で練習時間短縮、クラブハウスは使用せず、身体をつくるための食事は各自、ミーティングはリモート)選手だけでなくスタッフ、コーチも同様に多忙で様々な仕事をこなす。たとえば自分がかかわるイヤーブック制作の進行の正確さ、対応のはさやは、こちらが冷や汗が出てしまうぐらい。そんな彼らだから社会に出て1年目で凄まじい成果を出しているOBもいれば、志を持って独自に社会に向き合おうとしているOBもいる。これは優秀な京大生だからということだけでなく、京都大学アメリカンフットボールクラブという組織運営で選手、スタッフが厳しい日常で鍛え上げられているということだと思います。
未経験でも4年間、京大フットボールで自分を賭けてみたい、という選手もいれば、フットボールのためだけにあえて京大を選んで受験を突破してくる気概ある選手も毎年入部する。
「強いチームに入って当たり前に勝てる環境に興味がない。関学のような圧倒的なチームを倒して日本一になることに価値がある。これを叶えるチームこそ京大だと思う」
この言葉に京大の受け継がれた精神が在るように思います。偉大な結果を勝ち取ったOBたちの伝統を背負いながら、結果を出すために目の前の様々な課題と向き合う毎日。毎年、一週間あまりの短い時間を彼らと並走して思うことは、歓喜の瞬間を撮る側として体現してみたいということです。
こういう視線をきっかけにして学生アメリカンフットボールリーグを観戦してみるのも、また競技としてのアメリカンフットボールを体感していくのもいいと思います。オリンピックのアスリートと同じくコロナの影響は昨年から受けていて思うにまかせない現実もあるのですが、目標を設定して人間の持ち得る能力の全てを使い、個人として、またチームとして成長していく過程はやはり素晴らしいし、刺激になります。
関西学生アメリカンフットボールリーグDiv.1今年は9月3日開幕です。
京都大学アメリカンフットボールクラブ HPhttp://gangsters-web.com